大切な本84「この世にたやすい仕事はない」
お仕事小説、特に女性非正規職の悲哀を描かせたら右に出るものはいない同世代の書き手のお一人、津村記久子さん。深沢真紀さんとの共著「ダメをみがく」をはじめ、エッセイや随筆も余さず面白くてすべての作品が大好きなので、その中からいくつか絞るのはとても難しい…というわけで、フィクションに絞り、今の自分が日々痛感していることばがタイトルになっている作品をメインにとりあげてみた。
お茶くみ・コピー取りであっても仕事には変わりなく、人間関係や職場環境、通勤経路や労働条件…たやすい仕事なんて本当にないなあと、今更ながらため息が出るほど思い知らされる毎日。
仕事があるからお休みも嬉しく楽しく、やりがいも感じられるし色んな学びや出会いもあって、生きるうえで仕事ってとっても大切なものだけれど、楽しいばかりじゃないのも現実。仕事が楽しくてたまらない!毎日出勤するのが待ち遠しい、って思えてた頃…また巡ってくるのかな。
津村さんの作品では、パワハラや超過労働など結構シビアな現場も描かれている。嫉妬や支配欲、嫌悪や諦念…人間のどろどろした感情も描きつつ、どこかカラッと乾いた印象も残る。一貫して淡々とした空気が流れてて、読後感はなぜか重くなりすぎない。
そういえば、津村さんの作品に出てくる働き者たちは、皆会社や企業への雇われ人ばかりかも。フリーランスで働くとまたしんどさも変わってくるのだろう。
津村さんの作品には音楽や飲み物(特に紅茶)が効果的に挿入されていて、コーヒー党の自分でも紅茶が飲みたくなるシーンがちらほら。
そうだ、今日は紅茶好きな姉にはちみつ入りの紅茶を買っていこう。

すでに登録済みの方は こちら