大切な本96「酒をやめられない文学研究者とタバコをやめられない精神科医が本気で語り明かした依存症の話」
毎年秋に「アディクション・セッション」という名古屋市精神保健福祉センター主催の催しがあって、今年度も聴きに行ってきた。薬物依存症やクレプトマニアなど、なかなか人前では開示しにくい内容のものでも、当事者が堂々と聴衆の前で話すことのできる機会が公的機関主催の場である、ということに、時代は少しずつ変わってきたなあと感じる。
もちろん、まだまだ普及啓発や理解促進の途上ではあるけれども、よい兆しもみえるのは、現場で熱心に働きかけるひとがいるからであることには間違いない。
松本俊彦さんと横道誠さんのタッグなら面白くないわけがないのだが、この往復書簡は本当に面白くって、ウェブ連載のときから毎回の更新が本当に楽しみだった。書籍になり改めてまとめ読みしたときの幸せな読書時間よ。
お2人ともなかなか赤裸々に語られていて(横道さんが松本先生の「パンツを脱がした」説(笑))、タイトルにある「本気で語り明かした」に異論なし!
お2人ともその生き方がユニークなだけでなく、文章がお上手すぎる。
松本先生は依存症分野の第一人者である精神科医、の看板だけでも素晴らしいのに、講演会での話術も巧みすぎるし、それがなくても筆1本でじゅうぶん生きていけると思う…天はいったいいくつの才能を授ければ気が済むのでしょう(もちろんご本人の努力の賜物ではあるでしょう)。
依存症やアディクションは誰でも当事者になる可能性があるもので、その深刻さの度合いはあれど、やはり「問題」「課題」として捉えられやすい。場合によってはいのちを脅かしたり周りに迷惑をかけたり犯罪になってしまう可能性もあったりと、もちろん負の側面も大きいけれど、ポップに語ったっていいじゃない。
依存症、ということばにネガティブなイメージを持っている人にはぜひ読んでほしい一冊。
実習中にバックナンバーを読み漁った季刊「Be!」も雑誌全体のトーンが重くないところが好き。廃刊になる雑誌も多い昨今だけど、これからもずっとずっと継続してほしいな。

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