大切な本72「緑と赤」
R-18文学賞を受賞され、その後も活躍されている作家さんは大勢いるけど、そのなかでも深沢潮さんにはまた格別な思い入れがある。
在日コリアン1世の父親と2世の母をもつ彼女自身は日本国籍を取得されたそうだけれど、在日コリアンのルーツやそれぞれの生き方をとりあげた作品群はどれも「自分ごと」として描かれているから、すっと滑らかに胸に落ちてくる。
様々な生きづらさを抱える女性や貧困・差別や偏見など、昨今の世相を反映したテーマをとりあげた作品も多くて、どのタイトルも印象に残ってる。
甥の誕生日には毎年文庫本を贈って(押しつけて)いるのだけど、中学生の時に彼女の作品も紛れ込ませたっけ。日本で生まれ、今後も日本で生活していくだろう甥姪たちは、特に迷いもせず父親(姉の夫)の国籍(日本)を選ぶのだろうけど、自分たちにはコリアンのルーツもあるってことにどれくらい自覚的なのかな。きっと、良くも悪くも、深く悩みもせず自然に受け入れていくのだろう。
「緑と赤」というタイトルからすぐパスポートを思い浮かべられたのはきっと、私自身が深緑色のパスポートを持っているから。数回使っただけで期限の切れたパスポート、更新したら次はどこへ行けるかな。

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