大切な本⑫「急に具合が悪くなる」 

往復書簡最強説
むちむち 2024.04.15
誰でも

私が子どもの頃はSNSはおろか携帯電話ももちろんなかったから、友達とはよく文通をしていた。同じ学校に通う友達とは交換日記もしていたし、転校して離れてしまった友達や恩師、遠方に住むいとこなど…多い時は7、8人と並行して文通してたことを懐かしく思い出す。

可愛いレターセットをあれこれ集めるのも大好きで、フェリシモの100枚便箋とか映画スターのポストカードもコレクションしてたっけ。

往復書簡、という明確なジャンルがあるのかどうかはわからないけれど(NDCでも日記や書簡の番号はあるけれど結構曖昧)、往復書簡形式の本は「当たり」が多い。そのペアが決まった時点でもう半ば完成しているのかも。もちろん第三者も読むことを想定して書かれているのだろうけれど、特定の相手に向けてことばを綴るその行為がもう愛おしい。私も若い頃は恋人でも何でもない⚪︎⚪︎ちゃん(ときには⚪︎⚪︎くん)に伝えたい!と半ば衝動的な思いつきの相手に手紙を送りつけたこともあったっけ。変に意味深に取られて困らせたこともあっただろうけど、律儀に返事をくれる友達も多くて、それらの手紙は今でもずっと宝物。

哲学者の宮尾真生子さんのことはこの本を手に取るまで存じ上げなかったのだけれど、宮尾真穂さんの名前に惹かれて手に取り読みながら涙が溢れて止まらなかった。本や映画に触れて涙することはなくはないのだけれど、この本ほど泣けたことは近年ない。2人の間に流れる信頼感、まさに来んとする死と向き合う人の発することばの重みにただただ打ちのめされた。こんなに人の心を震わせることばってなんてすごいんだろうって本の威力を思い知った一冊。

横道誠さんと松本俊彦先生のWeb連載「酒をやめられない文学研究者とタバコがやめられない精神科医の往復書簡」の書籍化も待ち遠しい。むちむちは独断で往復書簡最強説を唱えたい。

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